第1部「消費税の仕組み」編

02消費税を預り金の入湯税と比べたら…預り金ではなくってよ!

02消費税を預り金の入湯税と比べたら…預り金ではなくってよ!
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始まりますわよ

消費税は預り金ではない」ということが、預り金の入湯税と比べたら分かるって、ホントですの? なお、私の出番は最初と最後のみですのよ。メンゴメンゴ m(_ _)m

「預り金」は預かった人のお金じゃない!

ウサコ
ウサコ

お兄ちゃん、早く消費税と入湯税を比べようよ!

ヨウイチ
ヨウイチ

あわてないで。その前に「預り金」がどういうお金なのか、確認しておこう。

来週、ウサコと一緒に映画「プリティア!」を見に行くために、昨日、前売券を買ってきてもらったよね。

ウサコ
ウサコ

うん、お兄ちゃんの分と一緒にバイト代…で私のも買ったよ…

ヨウイチ
ヨウイチ

ウサコが僕の仕事を手伝ってくれた時のバイト代だね。ちょうどいい、その2つで「預り金」がどういうお金なのか、よく分かると思うよ。


 預り金と譲渡金の違い1:お金の所有者が異なる。
区分ヨウイチウサコ映画館所有者
預り金1,000円購入代行
依頼(預け)
預り金
1,000円
購入代行前売券
映画チケット(おとな)
ヨウイチ
(水色)
譲渡金1,000円バイト代
支払(譲渡)
譲渡金
1,000円
購入前売券
映画チケット'(こども)
ウサコ
(ピンク)
 譲渡金:ここでは「使用する権利を他者に譲り渡したお金」という意味で使っています。

ヨウイチ
ヨウイチ

僕の分を買ってもらうためにウサコに渡したのが「預り金」だ。買う時はウサコが持っていたけど、それは僕のお金だよね。
でも僕からのバイト代はウサコに譲り渡したお金だから、ウサコのお金なんだ。

ウサコ
ウサコ

なるほど…ホントはね、欲しかったグッズを先にバイト代で買っちゃったから、ウサコの分は自分のお小遣いで買ったんだよ…

ヨウイチ
ヨウイチ

ナイス、ウサコ! そこは大事なポイントで、バイト代はウサコのお金になっているから、ウサコが好きに使えるんだ。でも、預り金は?

ウサコ
ウサコ

ウサコのお金じゃないから、自分のために使っちゃダメ!
ポイントを下の表に整理したよ!


 預り金と譲渡金の違い2:預り金自分のために使えない譲渡金自由に使える
区分他人自分映画館所有者自分が使用
預り金1,000円購入代行
依頼(預け)
預り金
1,000円
購入代行前売券
映画チケット(おとな)
他人
(水色)
譲渡金1,000円バイト代
支払(譲渡)
譲渡金
1,000円
購入グッズ
兎グッズ
自分
(ピンク)

入湯税は「預り金」だけど消費税は?

ヨウイチ
ヨウイチ

さあ、いよいよ入湯税と消費税を比べていくよ。
入湯税は温泉客の税金で、温泉事業者が徴収して、お客さんに代わって納付するんだ。僕の前売券をウサコに買ってもらったのと同じ仕組みだね。

ウサコ
ウサコ

うん。入湯税は「預り金」で、国税庁の分類は消費税と同じ間接税、と。
詳しくは下のギャラリーと説明をクリックして見てね。


入湯税は「預り金」

  1. 財務省
    入湯税は、温泉に入った客に代わって、施設の経営者が市町村に納める仕組みになっています。
  2. 総務省(自治税務局が地方税法を所管)
    課税客体:鉱泉浴場における入湯行為
    徴収方法:旅館等が特別徴収義務者として、入湯客から入湯税を徴収し、市町村に納入
    (地方税法 第四章 目的税 第四節 入湯税による)
  3. 神戸市
    納税義務者:鉱泉浴場の入湯客
    申告と納入:鉱泉浴場の経営者が入湯客から徴収し、前月分を毎月末日までに申告して納めます
  4. 国税庁
    間接税:消費税(国税)、入湯税(地方税・市町村税)

ヨウイチ
ヨウイチ

入湯税の仕組みは温泉客の税金で、温泉事業者が徴収して、お客さんに代わって納付するから、下の表のようになるよね。「預り金」の間接税だ。

 入湯税:温泉客の税金温泉事業者が徴収して納付代行預り金」の間接税
内訳温泉客
(納税義務者)
温泉事業者
(徴収・納付
義務者)
納付先区分税分類
入湯税150円納税徴収
(預け)
預り金
150円
納付代行市町村預り金間接税
入館料等500円支払/売上
(譲渡)
譲渡金
500円
譲渡金
ウサコ
ウサコ

入湯税は「預り金」だから、増税があっても、負担は温泉客さんだけで、
温泉事業者さんは痛くもかゆくもないのね…

消費税は「預り金」?

ヨウイチ
ヨウイチ

では、消費税の仕組みはどうなるかな?
国税庁の分類はどうだったっけ?

ウサコ
ウサコ

入湯税も消費税も同じ間接税、ということは…消費税も「預り金」だよ!
入湯税は温泉客の税金で、温泉事業者が徴収して、お客さんに代わって納付
消費税は消費者の税金で、事業者が徴収して、お客さんに代わって納付よね!

 消費税は入湯税と同じ「預り金」で間接税かな?
内訳消費者
(納税義務者)
事業者
(徴収・納付
義務者)
納付先区分税分類
消費税100円納税徴収
(預け)
預り金
100円
納付代行税務署預り金間接税
税抜価格1,000円支払/売上
(譲渡)
譲渡金
1,000円
譲渡金
ヨウイチ
ヨウイチ

それじゃあ、答え合わせをしてみよう。


消費税は預り金ではない!

 消費税は入湯税と同じ「預り金」ではない!(   分類や役割が間違っている箇所)
内訳消費者
(納税義務者)
事業者
(徴収・納付
義務者)
納付先区分税分類
消費税100円納税徴収
(預け)
預り金
100円
納付代行税務署預り金間接税
税抜価格1,000円支払/売上
(譲渡)
譲渡金
1,000円
譲渡金
ヨウイチ
ヨウイチ

実は消費税は事業者の税金で、事業者が納付しているから「譲渡金」の直接税になる。僕がウサコに譲渡したバイト代を、ウサコが好きに使ったのと同じ仕組みで、下の表のようになる。

 消費税は事業者の税金で「預り金」ではなく譲渡金」の直接税
内訳消費者事業者
(納税義務者)
納付先区分税分類
販売価格
(事業者が
決定)
1,100円支払/
税込売上
(譲渡)
消費税
譲渡金
100円
納税納付税務署譲渡金直接税
税抜
売上
譲渡金
1,000円
譲渡金
*実際の消費税納付時には仕入税額控除があります。
ウサコ
ウサコ

ええぇッ!? 消費税は「消費」って名前なのに、事業者の税金なの???
名が体を表していないよ! どうして?

ヨウイチ
ヨウイチ

名前はともかく、消費税法の第五条で、納税義務者は「事業者」つまり、事業者の税金と定められているんだよ。

ウサコ
ウサコ

入湯税は温泉客の税金で、温泉事業者が徴収して、お客さんに代わって納付だから「預り金」の間接税だったけど。
消費税は事業者の税金で、事業者が納付だから「譲渡金」の直接税なのね…


 入湯税:温泉客の税金温泉事業者が徴収して納付代行預り金」の間接税
内訳温泉客
(納税義務者)
温泉事業者
(徴収・納付
義務者)
納付先区分税分類
入湯税150円納税徴収
(預け)
預り金
150円
納付代行市町村預り金間接税
入館料等500円支払/売上
(譲渡)
譲渡金
500円
譲渡金

 消費税:事業者の税金事業者が納付譲渡金」の直接税
内訳消費者事業者
(納税義務者)
納付先区分税分類
販売価格
(事業者が
決定)
1,100円支払/
税込売上
(譲渡)
消費税
譲渡金
100円
納税納付税務署譲渡金直接税
税抜
売上
譲渡金
1,000円
譲渡金
*実際の消費税納付時には仕入税額控除があります。

ヨウイチ
ヨウイチ

そして、消費税法には「消費者」という言葉は一言も出てこないから、消費者の税金預り金という事は絶対にない。それが裁判の判決(*)の理由だ。

ウサコ
ウサコ

消費税の納税義務者消費者じゃないから「消費税は預り金ではない」のね!
でもそれだと、消費者は消費税を払っていないの…?

ヨウイチ
ヨウイチ

そう、納税義務者ではないから税そのものは払っていない。あくまでも事業者の決定に委ねられた販売価格を支払っているに過ぎない(販売価格の一部に含まれている)。繰り返すけど、入湯税とは違って、納税はしていない。

ウサコ
ウサコ

ん~、すっごく分かりにくい!
ホントのホントに消費者は消費税を払っていないの…?

ヨウイチ
ヨウイチ

分かりにくいよね。財務省の説明で「消費税は消費者が負担」=「消費税は消費者の税金」とか「納税義務者の事業者が預かって納付」=「間接税」と思い込んでいると、納得しづらいよね。カギは「納税義務者」なんだ。


消費税の説明1_財務省
財務省「消費税を知ろう」より抜粋

この頁での「直接税」と「間接税」の定義は、以下の通り。
・直接税:納税義務者と納付義務者が同じ税(ほとんどの税がコレ)
・間接税:納税義務者と納付義務者が異なる税
この定義では「直接税」と「間接税」は明確に二分される。しかし、気づかれた読者もおられると思うが、これは国の定義とは異なる。国は「実質負担者」と「納税義務者」で分類しているからだ。
筆者は国の定義と分類には問題があるという立場で、それについては『#04「消費税は間接税」は「預り金」の誤認を招く分類ですわ!』(参考記事↓)で説明する。
表記のダブリが気になる方は、この頁の定義は「直接納付税」「間接納付税」と読み換えてください。
少なくとも、地方税法では、
 (1)納税義務者が税金を納めることを「納付」
 (2)特別徴収義務者(=納付義務者)が納税義務者から徴収した税金を納めることを「納入」
として使い分けている。
国税は…?


ヨウイチ
ヨウイチ

じゃあ、次回は消費税の納税義務者が争われて「消費税の納税義務者事業者」=「消費税は預り金ではない(納税義務者は消費者ではない)」という、裁判の判決(*)を説明するよ。

ウサコ
ウサコ

消費税は預り金ではない」…じゃあ、
消費税増税があったら事業者さんは…痛いの?

ウサコ
ウサコ

う、うん…Not even justice, I want to get truth! だね…


今回のまとめですわよ

消費税は預り金ではない」のカギは「納税義務者事業者」!
でも、ウサコちゃんの言うとおり、消費者消費税そのものは納税していないって、分かりづらいですわ! ヨウイチくん、次回で鮮やかに裁判の判決を説明してくださいましな。

つづく

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このブログは3部構成の予定です。各部は「カテゴリー」で分けています。
第1部「消費税の仕組み」編
 検証可能な資料を使って「消費税の仕組み」を説明していきます。
第2部「インボイス制度」編
 10月施行予定の「インボイス制度」の概要と問題点、施行延期策。
第3部「消費税の正体」編
 消費税の問題点を取り上げて、その「正体」に迫ります。
全部で約20回ほどの予定です。最後までお付き合い頂けましたら、幸いです。

参考